耳猫風信社の雑貨舗であつかう2月の鉱物を、すこしずつご紹介する。
まずは、星を宿す水晶。
氷砂糖をおもわせるこの水晶に、ようく目を凝らしてみてほしい。星があるのがごらんになれるだろうか。白い山のすれすれに、顔をのぞかせている。まさに、この時期にしかお目にかかれない、南の星カノープスのごとく。
この星の正体は、水晶の結晶のなかに混入したホランド鉱である。自分だけの星を、つかまえた気分になれる石だ。
2月の星といえば、やはりカノープス。東京では肉眼で見るのはむずかしいが、南へゆくほど、遭遇できる可能性は高くなる。
野尻抱影(のじりほうえい)氏の『星と傳説』(ほしとでんせつ)のなかで、著者は関東大震災のときに、焼け野原の東京で見たほか、駒澤村でも見つけたと記している。両国駅のプラットフォームからも見えたという人づての記録もある。
カノープス(Canopus)は、りゅうこつ座のα星だ。同じく野尻氏の『星座のはなし』から引用してご紹介すれば、
光度はマイナス0.9等。全天ではシリウスのつぎに明るい星である。シリウスは9光年であるのにたいし、カノープスはおよそ460光年。実際は、シリウスよりもはるかに巨大な星なのだ。あかるさは太陽の4万5千倍、質量は1万倍もあるそうだ。
カノープスとは、ギリシャ神話のアルゴ船の水先案内人の名である。いかにも少年の心を惹きつけそうな名称だ。そのあたりは、『天体議会』を読んでいただければ幸い。
今回は、フランスの夜行列車のなかで、わたしの友だちがGetしてきてくれた、砂糖の包みとともに。
この砂糖の包みを参考に、大きさを推測してほしい。
このたびは、水晶のなかの〈ちょっとしたまざりものを愛でる〉シリーズとなっている。次回は草入り水晶をご案内する。