方解石(Calcaite)
わたしは、ざらめをまぶした甘い煎餅(せんべい)が好きなので、
(ざらめの角で、口のなかが痛くなりそうなものほど歓迎)
この標本のような方解石を見ると、すぐに餅(もち)菓子を連想してしまう。
でも、これはただの煎餅ではない。うっすらと孔雀緑色をした土台が見えるはず。
ちょっと角度を変えてみる。
これが孔雀色の正体。緑の縞(しま)もようが、ごらんいただけるだろうか?
画像でもハレーションを起こしているけれど、
肉眼でも目を凝(こ)らそうと、がんばるほど、もやもやとした孔雀緑が浮かんでくる。
その幻惑は、さらなる秘密をほのめかすもの。
さらに角度を変えてみよう(うら返し)。
さあ、みなさん、
この海底地図を持って、いざ南の楽園へ(笑)
ラグーンのある、遠浅の海と海岸線が見えてくる。
すこし深いところは孔雀青に、淡いところは翡翠(ひすい)の緑、珊瑚の白、それが砕けて白い海岸線をなす。
より深いところには、青黒い砂が堆積(たいせき)する。
(おそらく、洞窟があるにちがいない)
見えかくれする小さな島々。
……という具合に、地図に見たてて遊ぶことができる。表も裏も、楽しい標本だ。
実は、この標本はアメリカのアリゾナ産。
かつて海だったこともある、太古の大陸移動のまぼろしを宿す、山のなかの鉱物である。