E・デュラックの妖精の絵を思い浮かべつつながめると、
氷の平原のはてに尖塔(せんとう)をいただくクリスタルパレスに、
見えなくもない。
ウッドハウス石という聞きなれない名は、
この氷の宮殿に、雪のようにふりつもった粉状の結晶のことをさしている。
氷菓子のしあげに、粉砂糖をふるったように。
母岩(宮殿の本体)は、水晶。
水晶としては、たいへん小さなかたまりだが、
宮殿らしく、ととのったフォルムがすばらしい。
氷でできた小さなバラのつぼみといった風情を持っている。
右手のひくい尖塔のいただきが、
そこだけ目だって光る。
星をかくまっているように。
そのかがやきを、画像にとどめるのに苦心した。
背景と暗くしてみたので、
なんとか見届けることができるのでは、と思う。
こちらは、耳猫風信社ではおなじみのカルサイトだが、
この標本の特徴は、
カルサイトにしてはめずらしく、研磨していない結晶であること。
その証拠は、表面のモアレ(波もよう)。
これもまた、画像におさめるのに苦労した。
沙丘の風紋のような、
あるいは、はるか上空から段丘をながめたような、
そんな景色が見えてくる。
透過光では、このとおり、
光の戯れをたのしむことができる。
氷の宮殿で、饗されるスイーツ。
純白のソルベにルビーのようなベリィの粒をのせて。
これは母岩つきのスピネル。
小さいけれども、
ばら色がかった紅が、きわだっている。