上野の芸大美術館で
フィンランドの画家、
ヘレン・シャルフベックの展覧会を観てきました。
上野駅から美術館までの道中は
緑陰のなかを歩き、広場を横切り。
日差しのある日でしたので、
初夏の光というものを、目と肌でひしひしと感じました。
濃い緑ほど強く反射し、
白と緑が近似する、ということを実感します。
印象派の画家たちが、緑のうえに白い斑をのせて
明るさを強調したあの技法のことを
思いだしました。
さて、シャルフベックは未知の画家でした。
印象派の人々とほぼ同時代の画家ですが、
若いころにフランス留学をしたほかは
フィンランドにとどまって画業をつづけたかたなので
時代の影響よりは、自身と向き合う時間が
長かったであろうことを感じさせる
独特の雰囲気をまとっています。
数々の自画像の展示によって、
画業とともに、画家の人生の縮図を観るようで
面白い構成だと思いました。
そのつど、興味のある技法で表現する、
という作品群です。
卓抜なデッサン力により、
十八歳で早くも国家買い上げとなるような
絵を描きあげた早熟の才能の持ち主でした。
その絵は傷ついた兵士を描いたものですが
背景の雪原の多彩な白さに目を惹かれました。
地平線から雪煙が立ちあがり、
それが雪雲におおわれた空とまじりあうのですが、
その白の豊かさに、土地柄というものを感じました。
年を重ねるにつれ、
デッサンよりも色彩で描写するようになります。
晩年の黒いりんごが印象的です。
熟しきった色としての黒なのか、
老いと向き合う画家の象徴としての黒なのか、
反射しないものは、黒さをより強く感じる目の状態が
反映されたものなのか
たぶん、それらのすべてなのだと思います。
会場内で、
オシャレなマダムを何人も見かけました。
わたしよりかなり年長の方々です。
ストールの巻きかたが、たいへん個性的で素敵であったり、
時計の革ベルト(やや幅があり、肘と手首のなかほどで留めていらっしゃるのが
五分袖くらいの黒のトップスとバランスよく)が、
オレンジと白の目を惹く配色であったり。
ほかの美術館よりオシャレマダムの割合が高いのは、
芸大の卒業生などが多く混じっていたからでしょうね。
暑い季節はなげやりな服装になりがちのわたしですが、
(あるいは完全防護服で、オシャレは二の次)
おおいに反省しました。