渋谷のbunkamuraミュージアムで開催中の「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」に出かけた。
わたしが学生のころ、ラファエル前派の展覧会はたいてい大混雑で、人の頭ごしにかろうじて絵をながめるのがやっと、という状態だったが、21世紀の今日、美術館は正常な環境にもどっていた。
自分の好きな歩調でめぐることができ、気になる絵のまえでは、いくらでも立ちどまっていられる。ありがたいかぎり。
「オフィーリア」もゆっくり鑑賞できた。罌栗(けし)の花の紅や、草の緑の、ヒ素や水銀などの有害物質をたっぷりふくんでいそうな発色が、ヴィクトリア朝という時代の毒気をかんじさせてくれる。
学生のころは、若気のいたりで、「両親の家のキリスト」という宗教画にも、風俗的な妄想をかきたてられたものだが、今はすでに当時の、わくわくした気持ちからはほど遠いところにいる。
こうした少年の絵よりも、母のひざのうえで、今にもあばれだしそうにしている小娘の絵に共感する。
海辺に少年が二人いる絵は、ミレイの息子たちがモデルだそうだ。「こんなことするの、いやだな」という、きゅうくつそうな表情がたのしい。
はがきは全部で5枚(3種類)。文庫「三日月少年の秘密」のサイン本をお申し込みくださったかたのなかから、当選者をえらび、文庫といっしょにお届けする(予定)。