困ったことに、わたしは版元からまわってくる販促用のPOPにメッセージを書く、というのが、なにより苦手。というより、きらいだ。
今週も、改造版「少年アリス」のためのそれが、手もとにあり、版元が急いでいるのを承知しつつ、つい放置を。さいそくがきたので、ようやく書いた。
そもそも、「……な気持ちで書きました。」とか「……彼ら(登場人物のこと)の、成長ぶりにご注目ください」とかなんとか、そんなことが書いてあったとして、なにか意味があるの?と思ってしまうひねくれ者としては、な~んにも書きたくない。
書いているとちゅうはともかく、終わって版元に手渡したのちは、原稿はわたしとは切り離されるべきもの、と思っている。
わたしの母などは、作家の私生活(女たらしであったり、人の夫を横どりしたり、人妻と心中したり)のイメージで作品をもとらえてしまい、読まずに「きらいだ」という傾向がある。それは、べつに特別なことではなく、ごく一般的な態度でもあると思うが、わたしは作家の私生活など、どうでもよい。
年譜を読むのは好きだが、作品を読むときは、年譜の内容はほとんど思いださない。
それは美術家でもおなじ。
美術展へ出かけると、たいていその画家の生涯を年譜にしたものが展示されているが、ほとんど読まない。
目のまえにある絵の情報だけをもって鑑賞し、勝手に思いこみ、とてつもない勘違いをすることも少なくないが、わたしはべつに研究者ではないので、いっこうに平気だ。
さてPOPのことにもどるが、河出書房新社がつくってくれたPOPの台紙じたいは、とても可愛らしく、よくできている。
そこへ、ひねくれたメッセージをそえたので、改造版「少年アリス」の刊行後に、もし書店の店頭で見かけたら、笑って読みとばしてほしい。