薄荷糖のようでもあるし、こうして本の上におくと、部分的に文字を照らしてくれる、秘密のアイテムなのだと、三日月少年が云いだしそうな気もする。
角ばったかんじが、セスジツユムシという虫にも似る(「白昼堂々」のシリーズで、凜一と氷川が語らう場面に登場させたので、ご記憶があるかと)。
螢星をつかまえて、昼にながめてみたら、こんなふうかも・・・と思ってみたり。
画像のページは、バラードの『結晶世界』の冒頭である。石化した鳥だの、結晶化した河のほとりだの、と怪しいことが書いてある。
ある男が、忘れえぬ女を追ってたどりついた港で、水死体を発見する。その死体の片腕は、水晶のように結晶化していた・・・。
ずいぶん昔に読んだ本をひもといてみたら、鉱山主の名前がソーレンセン。
なるほど、わたしは、『新世界』のシリーズでソレンセンの名を出したときに、ツール・ド・フランスに出場していた北欧の自転車選手の名前を借りたつもりでいたけれど、潜在的なルーツはここにあったのかも。
バラードは、今もなお現代をえぐる小説を書きつづけているけれど、60年代~70年代の作品はとくにすばらしい。わたしが、もっとも好きなのは『ハイ・ライズ』。
イギリスにおいては、貧困層ほど高層住宅に住むという。日本と逆の現象におどろいたものだ。『ハイ・ライズ』の冒頭は、主人公がアルセーシアンの肉を食べているところからはじまる。
英語圏の「ことばによる嫌悪の表現」の徹底ぶりにうといわたしは、米国人が某国を卑しめるために、わざとその犬種を「アルセーシアン」と呼ぶことを、当時は知らなかった。いったいどんな生物の肉なんだ?としばらく悩んでいた。
実際は、よく知られたドイツ犬だった。