
北園克衛の詩集『真昼のレモン』のなかに、「シガレットの秘密」という詩がある。
横書きでご紹介するのは、あまりよくないことなのだが、
聡明な緑の壁にそつて
紫
という魅惑的なことばではじまる。
かつてわたしが書いた『絶対安全少年』(2000年作品社刊)のなかでも、引用している。全文はそちらでごらんいただくか、もちろん北園克衛の詩集で読んでほしい。
もうすこし先に、さらに心をそそられることばがみつかる。
水のなかの孤独
を引く
菫的の
星的のガラス
の破れ
まもなく、庭の菫咲きはじめる季節だ。
さくら祭りのあとの今月の雑貨舗は、菫をテーマに小さなお祭りを。
ごらんの紫水晶は、透明感のある紫が、なかなかめずらしい。
マグマが冷えてかたまるときの水蒸気の泡が結晶化すると、こんな鉱物をつくりだす。
今回は、南米リオ・グランデの産。
みなさんも、小学生のころ、世界地図で大陸のかたちを見比べて、「大発見した」ことがあるにちがいない。
南米大陸とアフリカ大陸の(それぞれ向きあった)アウトラインが、半分にしたビスケットを、ちょっとはなして置いたように、そっくりである、と。
その大陸の分裂がもたらしたエネルギーが、このような鉱物を生みだすのである。

こちらはライティングしたときの、紫。
では、ふたたび北園克衛の「シガレットの秘密より」。少年のための菫を。
消えてゆく砂漠
の真昼
菫的
の
星的
の
雨の花束