東博へ阿修羅を愛でに出かけた話はすでに書いた。
そのさい、入館までの待ち時間40分を、友だちとしゃべりたおしたのだが、その内容のほとんどは、学校時代のことだった。
というのも、いっしょに出かけた友だちが、かつての同級生だったからだけれど、阿修羅つながりで、ついつい過去へひきもどされたのだった。
修学旅行が先か、学園祭の前夜祭でおこなわれる仮装行列が先か、すでにふたりとも忘れていたが、とにかく高校の修学旅行で興福寺をたずね、宝物館で阿修羅を見た。
その同じ年の学園祭で、仮装行列に参加した同級生のひとりが、阿修羅に扮したのだ。
それがあまりにも見事だったので、今も語り種(ぐさ)になっている。
箸がころげてもおかしい、という歳ごろだったから、阿修羅があらわれたとたんに会場は爆笑で、とにかくおかしかった、ということのほか、どんな演出であったのか、共演者が八部衆に扮していたのか、ほかの仏像だったのか、そういう仮装の細部は、まるでおぼえていない。
阿修羅を演じたのは、わたしたちのクラスでいちばん〈かぶく〉のがうまかった人物で、卒業アルバムにも数々の名場面をのこしている。
ともあれ、そういう昔話で時間をすごしてしまうほど、わたしたちも年齢をかさねてしまったらしい。
でもね、若い人に云っておくけど、あっというまだから。