武蔵国の国府であった府中に、大國魂神社というのがあり、その大祭で終日、大太鼓の音が聞こえている。一帯を、練り歩いているからだ。
わが家は、神社からはだいぶ遠いのだけれど、大太鼓はすぐ近くまでやってくる。
かつては日本一の大太鼓だったそうだが、今は一番の座はどこかにうばわれたらしい。
くらやみ祭りという。
文字どおりの祭りで、かつては女こどもは近寄るべからず、といわれていた。
新選組かんけいの、歴史小説では、たいてい土方さんが、この祭りで大活躍したさまが描かれている。
しかも十代のころから。
十年ほど前までは、露天商が居並ぶなかに、山猫女系の小屋もあったが、
近ごろは、出向くひまがないので、どうなのかわからない。
この祭りの日の天気は、たいてい悪い。
弁天が出張るからだと、云われている。
かつては農村地帯だったので、恵みの雨をふらす弁天は敬われている。
以前にも書いたことがあるけれど、弁天がひごろ祀られている神社から、大國魂神社までの道筋にわが家はあるので、ときおり極致的な雨にみまわれる。
すると、弁天が大國魂神社へ出かけたのだな、という連想がはたらく。
といって、べつに信者ではない。
子どものころから、弁天を擬人化するクセがついているだけだ。