夏になると、和菓子司の舗(みせ)さきに、寒天に紅い練りものでつくった金魚をあしらった金玉糖(きんぎょくとう)がでまわる。これは、ちょうどそんな菓子を思わせる石。
サンストーンの名で呼ばれている。
太陽のかけらを封じこめたような、と云われれば、もちろんそのとおりなのだが、どうしても硝子の器などに盛りつけたくなる。
透きとおったところは、ラブラドライト。角度によっては、虹色の光を放つ麗しい石で、これだけでも宝物になりうるが、さらに自然銅を含むことによって、紅い金魚を封じこめた姿になる。
とても小さいのに、とても高いのは、とてもめずらしいから(笑)
ミネラルフェアなどに出かけても、この石をならべている業者さんはまれ。だから、見つけるとうれしくなる。
わたしが、石をスイーツに見立てる遊びをはじめたころ(もう15年以上むかし)は、まったくの一人旅で、石屋さんで、「おいしそう」と云っては、不思議がられていた。
当時は女子の石好きの人も、知識の豊富な本格的な人が多く、自分でも採掘しよう、という勢いの人ばかりだった。
時は移って、今では石をスイーツとして語るのも、さほどめずらしくはない(ようだ)。
でも、それをわたしが、よろこんでいるかと云えば、そうでもない(笑)
元来、ヘンクツ者で、ひねくれ者のわたしは、実は一人旅が好き。
つるんだり、仲間と集うのは好きではない。
だって、そもそも石は、ひとりで眺めて妄想してたのしむもの。
知りあいといっしょに、ミネラルフェアやミネラルショーにでかけても、会場では別行動をして、あとで標本を見せあうわけだけれども、そういうときの心理としては、なんとかして同行者を出しぬいて、「やられた!」と云わせたいという意識がはたらく。
自分が、これは!、という標本をみつけたときに、知りあいの姿が、ずっと遠くにあると、ほっとする、ってことが、だれしもあるのでは?
そんなことを思うのは、いやなヤツではあるけれど(笑)、それがコレクターってもの。
ものづくりも同じ。
まっとうな菓子職人なら、たいていは自分がいちばん、と思っている。
仲間と和気あいあいで、ものを創りだそうなんて人はいない。
下の画像は、このたびの通販商品ではなく、わたしのコレクション。
金魚自慢。
まさに金魚を閉じこめたようなところが気にいっている。
でも、紅い色の発色は、このたびの耳猫風信社でご案内している標本のほうがきれい。
こんなふうに、硝子を透かしてみると、いっそう金魚のようになる。