久しぶりに、「魔笛」のCDを聴こうとして、取りだしてみたら、たいへんなことが起こっていた。
もしかしたら、今世紀にはいってから、ずっと聴いていなかったかもしれない。
3枚組なのだが、1枚ごとに保護のためのウレタンフォームがはさまれていた。
なんとそれが、気温のせいなのか劣化のせいなのか、激しく変質して、CDとくっついているのだった。
そろそろと、はがしてみるも、なにやら癒着(ゆちゃく)を起こしている箇所もある。
CDのネーム書き込み部分とはいえ、その表面のコーティングとウレタンフォームが化学変化を起こし、双方とも溶けている。
まさかこんなことが起こるとは。
記録部分は、見たところ無事なのだが、機械的には無事ではないかもしれない。
これが昔のCDプレーヤーなら、かまわず再生してしまったのだが、いまどきの機器は、ホコリごときでも故障するくらいだから、再生を断念した。
ところで、なぜ「魔笛」かというと、
小説現代の7月号掲載となる「傘どろぼう」(義兄と私のシリーズ)で、
ある人物が、自分の携帯電話にかかってくるある人物からの電話の着信メロディを「夜の女王」のアリアに設定しているから、筆者としてはちゃんとした音も聴いておこうと思ったしだい。
(だれが、だれの着信メロディを、夜の女王にしているのかは、読んでのお楽しみということで、雑誌が発売になったら、立ち読みをどうぞ。このアリアの訳を知っている人なら、だいたい想像がつくと思うけども)
わたしはカラヤン盤の「魔笛」を持っている。
なぜ、ガラにもなく、よりによってカラヤン盤なのかといえば、
このCDを買った当時、この盤だけが、三人の童子をボーイソプラノで聴くことができたから。
三人の童子を演じる少年たちは、いずれも当時実力においてほかの少年合唱団にぬきんでていた、テルツ少年合唱団員。
1980年の録音である。
彼らは来日公演でも、この三人の童子を唄ってくれたが、やはり通しで聴くのは楽しい。
カラヤン盤ゆえに、絶版になることはありえず、今もリニューアル盤を買うことができる。2枚組に編集されていた。
おどろいたことに、ライナーノートを読むだけでは、三人の童子がボーイソプラノかどうかわからなくなっている。テルツの名前もない。三人の少年たちが、もはや少年合唱団員ではないことを考えれば、当然なのかもしれないが。
昔のカラヤン盤のライナーノートには、少年たちの写真まで入っていたものだけれど。べつに、美少年というわけではない(笑)
少年への需要(というか、妄想、あるいは欲望?)がないのね、などとわたしは思ってしまった。
カラヤン盤は、スタジオ録音。
当時は、ザルツブルグ音楽祭の「魔笛」で、テルツ少年合唱団員が、実際に三人の童子を演じたこともある。それが、またたまらないんだ(笑)。DVDはなし。
衛星放送を録画して、さんざん再生したあげくのイカれたビデオテープから、やっとCDーRにダビングできる時代になったときに、さっそくダビングしたのを持っている(お宝)。
ときどき、彼らの現在を思ってみる。どんなオジサンになっているのだろうと。
(自分もバアさんに、なっているのだけれども)