アクチノライト(Actinolite)緑閃石
賢治は、放射状の結晶をとらえて、緑の水面(みのも)をゆく船の航跡になぞらえている。
(ここでは、みなもと読むよりも、みのものほうがよい)
さすがに「視力」にすぐれた作家である。
このたびの標本は船そのものでもあようなかたちで、賢治の描く世界を、そのままあらわしている。
この標本はカリフォルニア産だが、緑閃石は賢治の地元の早池峰山の蛇紋岩中からも採れたようだ。白い部分は繊維質で、かつては石綿の原料ともなった。
(アスベストとはべつだが、同様の用途につかわれたものと思われる。そういう意味では、真に安全な鉱物はない)
アクチノライトは別名を陽起石とも。文字どおりの用途があると信じられていた時代がある(この石を砕いて服用する)。
……というようなことは、忘れて、
しばし、緑の船で航海を。