新旧のカバーをならべてみた。
旧版(右)は1990年の刊行。いつのまにか、大昔に。
装幀デザインは、時代を映して耽美色の強いしあがりだ。
新装版では、このイラストは表紙(カバーをめくったところ)に原画のままつかった。
旧版のカバーは原画を加工してあり、より耽美的(怖く)になっている。
原画の台紙にも本の見返しにも扉にも、ロウケツ紙をつかっているところが、なんだか時代を感じさせる。
あのころは、テクスチャーを出すのが新鮮だった。
今は、もちろんフラット。
そのあたり、人のありかたそのものの変化と通じている。
新装版は、旧版のときの扉絵(とびらえ)をカバーにした。
タイトル文字は銀の箔(はく)押し。
(画像では反射して文字部分が飛んでしまっているが)
クロツグミの飾りつき。
ところで、本文の章タイトルをつなげると、一連の詩(のようなもの)になっていることに、読者のかたは当時気づいていらしただろうか?
昔のわたしは、妙なところに凝(こ)っていたものだ(笑)
というより、
生みの苦しみの産物。
この作品はデビュー3作目で、書くのにたいへん苦しい思いをした。
書き直しに書き直しをかさねて、たしか前作(「野ばら」)から1年ほどかかってしまった。
立ちはだかる壁をなんとか越えて今日(こんにち)にいたる、と今にして思う感慨深い作でもある。