なんだテレビ石か、と云うなかれ。
雲のうろこが、粋である。
雲といえば、名人のことばをふたたび借りてこよう。
宮澤賢治の作品にこんなタイトルの詩がある。
〔まあこのそらの雲の量と〕
まあこのそらの雲の量と
きみのおもひとどっちが多い
これは賢治の恋愛観ともいうべきものが、示されている詩で、
賢治が云うには、「清貧と豪奢は両立せず」と。
つまり、賢治にとっての恋は豪奢(ごうしゃ)なものなのだ。
清貧と豪奢とは両立せず
いい芸術と恋の勝利は一緒に来ない
労働運動の首領にもなりたし
あのお嬢さんとも
行末永くつき合ひたい
そいつはとてもできないぜ
と云うわけである。これで説教の相手は、なるほどなあ、と納得したのか反論したのか、それはどうだかわからない。
テレビ石(Ulexite)
ふつうは、もっと透明度の高いものが多く出回り、活字の上などに置くと(真ん中の画像のように)、文字を透かして読むことができる。
けれどもたまには、テレビ石の一方の特徴のひとつでもある、葡萄状のフォルムも味わいたいものだ。
若き日の思いほどに、ずっしりと詰まった雲を連想しつつ。
ほら、下のほうから、もくもくと。