以前に、人から面白いと教えられ、観たいと思っていたが、
機会にめぐまれなかったジャック・ドゥミ監督の映画「ロシュフォールの恋人たち」を、ようやくCS放送で観た。
デジタル・リマスター版で、色彩のあざやかさがきわだっていた。
音楽よりもことばよりも、なにより色彩で、幸福感が満ちてくる。
すこーんとぬけた、水色、オレンジ、
甘いオペラピンク、
ぬくもりのある黄色、
ガラスやタイルに映える風景の色。
エンドロールの水色が、あふれてくるシアワセで目にしみる。
カトリーヌ・ドヌーブと姉が演じる双子の姉妹、
躍るアメリカ人のジーン・ケリー、
姉妹の(そんな大きな娘がいるとは思えない)母役の、
(「8人の女たち」のときも、いったいいくつなんだ!と思った)
ダニエル・ダリュー。
(だって、わたしの母の世代のいい男であるジェラール・フィリップと共演していたじゃないか!)
などなど。
ああ、楽しかった。
けれどもこの幸福感を、教えてくれたその人と分かちあえない。
(ワケありで)
わたしが全面的に悪い。
年とともに、底抜けに寛容な人か、思いっきりもの忘れのひどい人としか、
まともな人間関係を維持できなくなっている。
都合の悪いことに、わたし自身は寛容でもなければ、忘れっぽくもない。
そういうわけで、きっとこれからも、
「ロシュフォールの恋人たち」を観るたびに幸福な気持ちの一方で、
心のどこかがチクチクする、というのを味わうのだろう。