耳猫風信社の情報ページに、11月末に刊行予定の書き下ろし、
『白いひつじ』の装幀(そうてい)の画像をアップしている。
この絵は、昨年から今年のはじめにかけて、ちょっとしたブームになった
デンマークの画家、ハンマースホイの作品。
上野の国立西洋美術館での展覧会を見たさい、この画家のほかの作品とはちがった色彩が印象的だった、「ライアの風景」という絵である。
わたしの悪い癖で、
展覧会で実物を見たあとで図録を手にすると、
印刷の色合いが気にいらず、購入しないことが多い。
ハンマースホイ展のときもそうだった。
あとになって、やはり図録の解説を読んでおけばよかった、と思いなおしたときはすでに完売していた。
というわけで、作者がどんな心境でこのひつじ雲の絵を描いたのかは、わからずじまい。
NHKの美術番組は進行のしかたが気にいらないので、見ていない。
(この番組で、ハンマースホイ人気が高まり、図録が売り切れたらしい)
「ライアの風景」は
ただの、のどかな晴れ間、というわけではない。
ハンマースホイは、白を貴重にした部屋と女の人の後ろ姿と、ロイヤルコペンハーゲンの陶器をモチーフとする作品を、数多く描いている。
そのなかにあって、青空にひつじ雲、緑の草原というこの「ライアの風景」は異色だ。
みなさんが、この装幀の本を、実際に手にするのはまだひと月ほど先になるが、
そのさいは、ようく絵をごらんになってみてほしい。
たんなる風景画でないことが、すぐおわかりになるはず。
小説の話にもどるが、書き下ろし作品というのは、
よぶんな事前情報なしで、うけとりたい、とお考えの読者のかたもいらっしゃると思うので
わたしのほうからは、あえてあらすじなどは、おしらせしない。
なぜか洋館で暮らすことになった男子の話、とだけお伝えする。