庭のニホンスイセンの花つきが悪く、
年末に、ちらほら咲いたのちは、音沙汰なし。
わが家だけかと思ったら、
ご近所の、いつもどっさり咲かせている家の株も、
まだ花がついていなかったので、
この冬は遅れているのかもしれない。
元日から机にはりついている。
気分転換に散歩へ出たら、
夏に花を見かけて、その名がわからなかった植物に、
名札がついていた。
自治体が管理している庭園なので、たぶん問い合わせが多かったのだろう。
それにこたえて、職員が気をきかせたものらしい。
夏に見たのは、おしべがやたらと長い、白い花だった。
ビヨウヤナギの白い品種なのかとも考えたが、
葉のようすが、ちがう。
花のほうは、バラ科やキンポウゲ科の仲間のようなのに、
葉脈の目立たないテカテカした葉がついている。
冬の今は、そのテカテカの葉のまま、
青紫の、1.5センチほどの楕円形の果実をつけている。
王冠のような、飾りのついた果実で、
このかたちも、見慣れない。
名札にギンバイカと書いてあった。
またの名をマートル。
ああ、なるほど、これがマートルなのか、と納得。
翻訳ものの書物ではよく目にする名前だが、
実物を見たことがなかった。
地中海原産なのだから、あたりまえ。
冬でも葉が青々しているはず。
ギリシア人が不死の象徴として崇めている植物だ。
(冠としてかぶっている)
大きく分類するとザクロとも近縁らしい。
と云われてみれば、
果実のかたちは、ザクロをうんと小さくして青紫に染めたようでもある。
地中海原産の植物でも、東京の冬を越せるのは、
園芸用に改良されたからなのか、
東京の冬の平均気温が上昇しているからなのか。
たしかに、子どものころは、
真冬のあいだは毎朝5センチ以上の霜柱が立ったものだが、
去年など、そんなりっぱな霜柱は1度も見なかったし、
この冬もまだ目にしていない。