辰砂(しんしゃ)
ラズベリー入りのフローズンヨーグルトといったかんじの
可愛らしいようすをしているが、
この紅い結晶こそ、真のヴァーミリオンの原材料であり、
絵の具のチューブにドクロマークがつく理由ともなっている。
辰砂は、水銀鉱山で産出する鉱物。
日本では北海道の旭水銀鉱山のものがよく知られている。
シルクロードの時代から中国が主な産地で、
この標本も中国で採集されたものだ。
辰砂の標本をさがしたことのある人なら、
このガラスペンのペン先の先ほどの結晶が、
辰砂としては、かなり大きな結晶であることがわかると思う。
ガラス光沢をもつ、上質な標本なので、
よくごらんいただけるよう、
接写の限界まで、アップにしてみる。
こんなかんじに、とがっている。
母岩が白いのも、めずらしい。
火の色として知られる辰砂の、白との対比が面白い。
雪の季節にふさわしい標本だ。
珪灰石(けいかいせき)
ちょっと耳なれないこの石は、
石灰岩と火成岩の接触帯であるスカルン帯と呼ばれる地帯で、
ごくふつうに産出する。
むろん、地質学よりフォルムという、わたしなどにとっては、
この盾のかたちに惹かれる。
房つきの、持ち手(ハンドル)までついている。
ココアパウダーをまぶしたような色あいも、よい。
横からながめてみると、また少し表情が変わる。
羽の彫像のよう。
表面をじっくりながめてみると、
まさに、鳥の羽のようなもようが浮きあがっている。
本来は繊維状になるのが、ごくふつうの珪灰石なのだが、
それがあまり目につかず、羽のように見えるところが、
この標本の特徴となっている。