菱マンガン鉱
甘酸っぱいキャンデイを連想させる、
種々のばら色が麗しい。
菱マンガンといえば、
金属質ゆえに、ずしん、と重い標本が多いのだが、
これはところどころに空隙(くうげき)があり、
その危うさが、面白い標本でもある。
画像ではわかりにくいかもしれないが、
右側の白っぽいかたまりの中央に、
紫色の結晶が見えている
ローズガーデンにまぎれこんだ、野すみれ、といった風情。
このひとつの小さな結晶のなかにだけ、
ちがう金属がまぎれこんだのか。
秘めごとの紫ゆえに(笑)
いろいろな想像をかきたてられる。
あの紫は……
(これは泉鏡花のつくった童謡の主題)
鏡花といえば、14日まで開催されていた
埼玉県立近代美術館にての、
「小村雪岱展」に行ってきた。
(こむらせったい、と読む。鏡花ファンであれば周知の装幀家)
寒い小雪まじりの日で、
雪岱描く「雪の朝」の、
すとん、と深い雪の光景が目に染みた。
今さらながら、
ずっと昔に古書店で見つけた
復刻版の「日本橋」を、買っておいてよかったと、
思うばかり。
小村雪岱も、一部の鏡花マニア以外には知られなくなっていたせいか、
今で考えられないくらいの、手頃な値段だった。
やはり、本は足でさがすもの。