泉鏡花がつくった童謡に「あの紫は」というのがある。
杜若(かきつばた)の紫をさした唄だけれど、
すみれの紫を連想してもかまわないだろう。
3月の標本のトップバッターは、
アメリカ テネシー州産の螢石。
即売会で、ひとめぼれした。
あの紫は、と特別あつかいしたくなる極上の紫だ。
母岩できらきらひかるのは、方解石。
角のとんがりに光があつまり、星ができるところにご注目。
なんだか、道明寺粉のお餅のなかに、寒天菓子がのっているようで、
おいしそう。
こちらも、透明感のある藤色がたいへん麗しい。
ゼリーと云われたら、真にうけてしまいそう。
つまんで食べたくなる。
さきの標本とおなじく、テネシー州産で、
母岩のきらきらが方解石なのもご同様。
まえの二つの標本より螢石はこぶりなのだが、
そのぶん、すみれの花のような可憐さがある。
母岩はカルセドニーに水晶がくっついている。
こまかいビーズのような銀のきらめきと、紫のコンビネーションが
ちょっと古めかしいブローチ風だ。
上とおなじ種類の、バリエーション。
紫の調子には、それぞれ味わいがあり、
どれがよいのか、きめられないほど。
濃いのも淡いのも、透けているのも光るのもあり。
こうしてあらためてならべてみると、
すみれ色っていいなあ、と思う。