アクアマリン
紫の濃い色を紫紺(しこん)と云う。
その紫紺の糸を染めるのにつかわれたのがムラサキ草の根だ。
ムラサキ科の植物は、白や空色の小さな花を咲かせる。
忘れな草もそのひとつ。
というわけで、忘れな草色のアクアマリンも、すみれ物語の仲間というわけ。
上の標本はナミビア産のアクアマリン。
とても小さな結晶だけれど、その小さな世界に
淡くぼかされてゆく空色をながめるたのしさがある。
右の背のひくい標本には、含有物の黒点があらわれているけれど、
それもまた、鉱物が結晶化する過程で取りこんだ金属のなごりであり、
記憶なのだと、
そんなふうに味わうこともできる。
完璧なものを求めたい人もいるだろう。
だが、あるがままを愛でる、という美学もある。
母岩つきアクアマリン
ドロマイテと水晶の母岩が、氷つぶのまじった雪のよう。
反射のまぶしさで、
アクアマリンの細い結晶が、もやのかなたに。
雪の朝の日の出まえ、まだ青いかげにつつまれている、
そんななかで、かすかな光をあつめる氷のつぶや、
氷柱(つらら)が、
一瞬だけ放つ、淡青色。
そんな、標本だ。
パキスンタン産。
さきのナミビア産もそうだが、
そういう乾燥地帯の産だからこそ、
海の記憶そのものであるような鉱物が生まれるのかもしれない。
母岩つきサファイア
凜々しい青の結晶だ。
青い飾りのついたロシアの毛皮の帽子、といった風情。
(いや、昼寝中のハリネズミくんかも)
小さく、ころん、としている。
柱状の結晶が、いくつか埋もれている。
おなじく母岩つきサファイアの標本の、バリエーション。
いずれもロシア産。
ベリルが酸化チタニウムをふくむと、青い色を発色するそうだ。