グリーンファントム / インド(ヒマラヤ)産
ソトの町の露店で、緑雨計を買った。
沙漠では、人の目に見えない緑の雨がふっている。
船のかたちをしたこの道具で、
緑の雨を計るそうだ。
銀色の標(しるし)のところまで雨がたまると、
透きとおった水が湧きだすという。
(旅人の詩編「雨」Ⅴ)
透明石膏 / イギリス産
ひとりの男が、道端で迷っている。
鹽(しお)や砂糖のように、
水を固めて持ち歩くことができたら、
沙漠の旅にはどんなにか便利だろう、
メルカートの商人が、彼にそんな誘い文句をふきこむ。
商人は丸い函(はこ)に
水の固まりとやらを詰めて売っている。
とほうもなく高価なその水を買うべきか否か、
男は考えこむ。
彼の足もとで、
かげろうが虹のようにゆらいだ。
(旅人の詩編「雨」Ⅴ)
ウッドハウス石 / カルフォルニア産
沙漠に棲(す)む
ガラスうさぎの耳である。
うまくかくれたつもりでいるが、
このとおり、いつも耳だけのぞいている。
それをつまんで持ちあげる。
だが、彼らは一瞬で指のあいだをすりぬけてゆく。
あとには、真昼の日ざしの暑さがのこるばかりだ。
(旅人の詩編「雨」Ⅴ)