国立天文台で、
日本最古の星空を写した乾板が見つかったそうだ。
おおよそ百年ほど昔の、明治時代のものである。
当時の天文台は麻布にあった。
だから、百年まえの東京のほしぞらということになる。
NHKの報道番組では、
乾板を反転させて、夜空として見えるように加工していた。
だから、わたしのような理科オンチも
プラネタリウム気分を味わうことができた。
ブラッシャー写真儀というもので、
長時間露光で撮影したそうだ。
オリオン大星雲も、くっきり写っていた。
ほんの二十数年まえは江戸時代であった、
そんな明治なかごろの話。
乾板は437枚見つかった。
震災や戦災で失われたと、思われていた。
三鷹の天文台の敷地のなかには、
古い建物もまだ多く残っている。
そうしたところでは、
都心から移転した当時のまま、
未整理のものが、まだまだ埋もれているのだろう。
失われたと思われていたものも、
出るときには、出る。
漂流したり、埋もれたり、
「もの」は意外にしぶとく
時間を超えてゆく。