これはむろん、賢治語。
ニムブスとルビをふって、
賢治作品にはめずらしく、
黒く淫らな雨雲に云ふ
などという使われかたをする。
(「県技師の雲に対するステートメント」春と修羅第三集より)
6月1日の日付になっている。
さらに
淫らなおまへら雨雲族は
と呼びかけ憤ってみせる
(賢治ではなく、県技師が、ではあるけれど)
気圧の変化を頭痛で感じるこの季節。
賢治も悩ましい気分であったようだ。
(なんてことは邪推ながら)
作中では、
欲望の在り処をあいまいにする賢治だが、
賢治作品の雲は、
やはり欲望と置きかえて読んでも
かまわないものだろう。
8月になると一転、
気分ソーカイ!だったらしく、
雲はレモンにたとえられる。
かすかな岩の輻射もあれば
雲のレモンのほひもする
(「早池峰山巓」春と修羅第二集より)