渋谷宮益坂上のイメージフォーラムにて。
土日はかなりの混雑というウワサだけれど、
平日の午前中は、すいていました。
編集、印刷から製本、流通まで、
「本作り」のすべての機能を社内に持つシュタデイル社。
その経営者であるゲルハルト・シュタデイル氏の、
奇人ぶりを存分に味わえるドキュメンタリーです。
イメージフォーラムのHPにある予告編の
「紙をさばく音」に早くも心が騒ぎ、
いそいそと会場へ出かけました。
シュタデイル氏が「本」に求める要素は、
視覚的なインパクトはもちろん、
紙の手触りと匂いです。
これはインクのと紙の匂いの両方。
本造りの行程を紹介する展示会場にて、
「においをかいでみてください」と云いながら、
みずから鼻を本にすりつけるシュタデイル氏。
真似する来場者たち。
かつての洋書はよく匂いました。
(和書の匂いには馴れてしまっていて、
感覚がにぶっていたのでしょう)
本ではないけれど、タワーレコードで買う輸入盤も
独特の匂いがして、
(たぶん、本体ではなくジャケットの)
あのにおいをかぐと、ワクワクしたものでした。
アーティストたちと、直接やりとりしながら
本作りをするシュタダイル氏の
動きつづけていなければ、生きつづけることができない
回遊魚のような日常がつづられます。
紙の音が心地よく。
コレクター垂涎のまとの精巧なシュタデイルの本を
トランクにぎゅうぎゅう詰めにしてしまうシュタデイル氏の
ザッパぶりも、
バックヤードの棚と引きだしのカオスも、
すべての時間は「本作り」のためにあると云いたげな日常も、
興味深いものでした。
好評につき、上映期間が11月初旬まで延長されたようです。
興味のあるかたは、
シュタデイル氏の奇人ぶりと、紙の音と
語られる匂いを味わいにおでかけください。