〈ゴルコンダ〉が印刷された魅惑的なチケットを
片手に会場へ急ぐその道すがら、
柱に掲げられたポスターの列が目を惹きました。
いざ展示室へ。
いつものことですが、
順路を無視して目当ての作品へまっしぐら。
今回は、もちろん〈ゴルコンダ〉でした。
なぜか、わたしはこの作品を
――雨傘を持った男が、雨のしずくのように
空から降ってくる――
タブローと記憶していたのですが、
なんと傘は持っていません。
傘を持っている男は
アメリカにおいてマグリットのパトロンであった人物の
肖像画として描かれた〈模範例〉に見られます。
図録によればこのふたつの絵にはもともと
関連性があるそうですから、
マグリットの思惑どおりに、
見る者の脳内でイメージが合体したというわけです。
〈アルンハイムの地所〉は個人蔵のグワッシュ作品が
展示されていて、おなじテーマの油絵作品とは
またちがった味わいでした。
しかも卵の数がちがう!!
上記の作品の
直前に描かれたという〈前兆〉もまた
洞窟の開口部から見る雄大な山の
雪に烟った姿に見惚れます。
〈光の帝国Ⅱ〉も今回の注目作品。
ヴァリアントの多い作品です。
人気作でもあるので、売店ではA4ファイルが売り切れていました。
4月下旬には再入荷するそうですが、
わたしは購入できず……。
行きつ戻りつしながら、たっぷり1時間半ほど堪能。
そのはずが、出口を通って売店まで来て
衝撃の事実が発覚。
(ポストカードを選んでいて)
なぜか、〈ピレネーの城〉の記憶がない!
その直前の〈ガラスの鍵〉と直後の〈現実の感覚〉は
ちゃんと観ているのに!!
ああ、なんともはや。
それはつまり、
マグリットが〈白紙委任状〉で云うところの
――目に見えるものは、いつもほかの何かを隠している――
ってことですね。
みなさん、お出かけのさいは、
わたしのようにならないようお気をつけください。