21世紀美術館といえばプールが有名ですが
このたびは地下部分が展示入れ替えのため閉鎖されており、
下からプール越しの空をながめることはもちろん、
プールサイドからも、水中の人を撮影することができず、
しかも曇り空で、
なにやら社員寮の使われないプールのような画像になって
しまいました。
そんな具合でしたが大収穫もありました。
展示作品のなかに
ジャナーン・アル=アーニ氏の映像作品
〈シャドウ・サイトⅡ〉があったことです。
8分間の短い映像ですが、
ぐっと惹きこまれます。
アル=アーニ氏が砂漠の紛争地帯における
破壊と消滅の跡をたどりながら
〈人のいない土地〉と題して撮影を
つづけているシリーズ作品です。
シャドウ・サイトとは考古学用語で
「陽がひくくなることによって影が濃くなり何かがあると
露呈すること」を指すそうです。
(上記画像はチラシの写真を接写したものです)
現在、広島現代美術館の
『俯瞰の世界図』展において
〈シャドウ・サイトⅠ〉を
金沢の21世紀美術館において
〈シャドウ・サイトⅡ〉を展示しています。
氏が撮影をはじめたきっかけは
砂漠の紛争地帯において花が咲き蝶があつまる場所を追っている
イギリス人女性がいる、という記事を知ったことだそうです。
21世紀美術館のキャプションを要約すれば
つぎのようになります
(撮影不可でしたので記憶によるもので長野の脚色が
はいっているかと思いますが)
不毛であるはずの砂漠のなかに、
なぜか無数のブルー・バタフライが集まる場所があり、
近づいてみるとそこには緑地がある。
それらの植物は、こんな砂漠のいったいどこから栄養分を得ているのか。
疑問に思って掘り返してみると
そこにはおびただしい遺骸が埋まっていた。
それはコソボ紛争によって虐殺された人々の亡骸である。
〈シャドウ・サイト〉シリーズはそうした現実から
生まれた作品です。
この映像に圧倒されてしまい、
旅先でもよく眠れるたちのわたしなのに
目が冴えて眠れず、
翌日の泉鏡花文学賞の授賞式では
寝不足状態でスピーチをすることに。
ただでさえ、小説家として話をするのは苦手なので
(書いた内容以外につけくわえることはないため)
なんだか、まとまりのないお話をしただろうと
思います(すでにウロおぼえ)。
お越しくださったかたがたのうち
わたしの読者でないかたには、
ほとんど意味不明の話であったかもしれません。
3月には金沢文芸館での講演会を予定しております。
お近くの読者のかたでご都合がつくようでしたら、
どうぞお越しください。
詳細が決まりましたら、ご案内します。
金沢のかたは地元で情報が得られるでしょう。
さてふたたび
〈シャドウ・サイト〉シリーズですが、
これは2012年に森美術館でも展示がありましたので
そちらでご覧になったかたも多くいらっしゃるでしょう。
わたしは、そのさいは見逃しました。
広島現代美術館の展示は12月6日(日)までです。
広島へも金沢へも行かれない~というかたのために
来年の東京写真美術館の展示のお知らせを。
『動いている庭』というタイトルがすでに魅惑的ですね。
2月11日から20日までです。
アル=アーニ氏の作品も展示されます。