7月2日の日曜日、恒例の野川朗読会がひらかれました。
野川流域で暮らす詩人のかたたちが参加して
それぞれの作品を朗読する会ですが、
このたびで第8回となりました。
会場の成城ホールには投票所もあり、
世田谷区民のかたたちが訪れていらっしゃいました。
わたしはそこをサッと通りすぎてしまいましたが、
詩人の野村喜和夫氏は、
ご自身の朗読のまえのミニトークで
「候補者のなかに、猫がいましたよ」とおっしゃる。
その猫が「地方議員をゼロ」にと公約している、のだとか。
(この時点で、
わたしの頭のなかでは、賢治さんの「猫の事務所」の情景が展開中)
野村氏の意識のなかの一秒半ぐらいのできごとだったそうです。
まばたきをしたのちに
再度候補者ポスターを見たところ、
その猫は女性候補者の肩に乗っていた、ということでした。
帰りがけにポスターを確認した、という人によれば、
ほんとうに、猫を肩に乗せた候補者が存在したそうです。
わたしは、野村氏が朗読会の聴衆を「かついだ」のだと思い、
確認しませんでした。
詩人は、いつもリアルを観察なさるのだということを
忘れておりました。
今回は、特別ゲストとして新川和江さんがお越しになり、
詩人の永瀬清子氏にまつわる興味深いお話をしてくださいました。
「あけがたにくる人よ」という詩についてのご考察が印象的でした。
新川さんはここで、ほんとうにさりげなく、
かなり際どいエピソードをひとつご紹介くださいました。
お話の本筋からそれた部分ですが、
わたしはココで、おお!と思いました。
新川さんは長野がミニトークで話題にした
野鳥の会会報『野鳥』6月号の表紙のミソサザイを
たいへん気に入っておいででした。
長野は昨年製作した小冊子
『レモンとお月さま』の後半の部分を朗読しました。
このなかに稲垣足穂が少年時代に心を奪われた
飛行機乗りの武石浩玻(たけいしこうは)が墜死するエピソードを
紹介している部分があります。
飛行士の死を悼んで、のちにその愛機は「白鳩」と
名づけられます。
わたしは自分のテキストながら、これを朗読するときに
「しろはと」なのか「しらはと」なのかを確定できず、
仮に「しろはと」と読みましたが(ほかの場面で伝書鳩の白鳩が登場するので)、
武石浩玻氏の愛機の「白鳩」のよみがなをご存じのかたが
いらっしゃいましたら、どうぞお知らせください。
水戸にお住まいの古老のかたは、ご存じでは、と思います。
今回は、そらしといろさんの朗読がとてもよかったです。
ご自身の最新詩集の『暁を踏み割ってゆく』から「前夜」を
お読みになりました。
温い水のなかをたゆたうような声の調子でお読みになることばに
耳をかたむけておりましたら
膕に南極がある
午前四時三十七分
検温の記録
はちどろくぶのひのゆめ
というところで、からだを揺さぶられるような気がしました。
わたしは「たましいレイヤード」の
脱いだあと
丁寧に畳んで箪笥へしまった僕の皮
虫が食わないよう防虫剤を入れて
のところも好きです。
素晴らしい詩集です。