原稿に追われて2月が過ぎ、
しばらくぶりのブログです。
雛人形を飾らないうちに桃の節句を迎えてしまいました。
桃の花もなし。
あの檀一雄さんの『太宰と安吾』を読んだあとでは、
桃の花を見るたび中原中也にからまれて困り果てたようすで泣きそうになりながら
「モ、モ、ノ、ハ、ナ」と好きな花の名を告げる
太宰さんのことが思いだされます。
文庫版『メルカトル』がKADOKAWAより刊行されました。
ファンタジー世界を繊細に表現するイラストレーターの三村晴子さんが
ミロナ地図収集館のある街かどを丁寧な書き込みで描いてくださいました。
解説は吉田篤弘氏です。
吉田氏もメンバーであるクラフト・エヴィング商會が1990年代に活動をはじめて以来、
ほとんど同じ時代を過ごしていながら、
コメット・タルホや野尻抱影さんの御本など、
数々のお仕事を周辺で拝見するだけでしたが、
(シャボン玉のなかに入れない庭のようにまわりをぐるぐる)
このたびは、『メルカトル』の解説を書いていただけることになったのです。
わたしの読者にとっても、
ちょっとお得な一冊になるのではないでしょうか。
文藝夏号の原稿のために書いていた原稿は、
前後篇にわけて掲載されます。
(後篇まで仕上げるのは無理だったので!)
その初稿が出るまでのわずかなすきに、
しばらくぶりの都会へ気分転換にでかけました。
ずっと原稿を抱えて冬ごもりでしたので
気晴らしが必要でした。
で、見に出かけたのは
クラフト好きの妹から聞きこんだ「大猫行列」の猫さんたちです。
東京五美術大学連合卒業・修了制作展の出品作です。
わたしの母校の後輩にあたる
杉山愛莉さんの力作です。
技法、材質の説明のところに「手漉き和紙・紙粘土・金網」と
ありましたので、金網で基本フォルムをつくり、
張り子のように和紙を張ったのだと思います。
猫さんたちは、気ままだけれどふざけていない行列ぶり。
それにふさわしく、奇妙にまじめな顔つきです。
展示はあしたまで。国立新美術館です。
入場料は無料ですから、お時間があれば出かけてみてください。
和みますよ。