〈銀河通信社〉の松本ちかです。
春になったので、森へ菫をさがしにでかけました。
ご存じですか?
まだ朝晩の冷えこみがあるころは、
野原よりも森のほうが菫をみつけやすいのです。
パッケージに
菫の花が描かれたチョコレートをいただきました。
それで、〈菫のお茶会〉をひらこうと思いつきました。
もちろん、
ひとりで愉しむお茶会です。
先日、銀河通信社からほど近い茶舗で
菫の花の蕾入り紅茶を見つけました。
《菫の螢》と名づけてありました。
螢は、儚いことのたとえだそうです。
10g入り5杯分です。
なんで、こんなに少量で売るのかしら、と
不思議に思い、お店のかたに訊ねましたら、
開封したとたんに花の色が褪せて、
暗所にしまっておいても、
5杯目を淹れるころには、
「菫色ではなくなってしまうから」とのことでした。
そういえば子どものころ、
菫の花片をあつめて万華鏡をつくったことがあります。
青紫のタチツボスミレを摘みました。
見つける場処によって、
少しずつ濃淡があり、
それを鏡の迷宮に閉じこめたなら、
さぞかし麗しいことでしょう、と思ったのです。
子どもですから、花の色留めのことなど
かんがえもせずに。
結果は、みなさんのご想像のとおり。
わたくしには五つちがいの兄がおり、
妹の失敗を横目に
彼はなにやら道具をもって森へ出かけていきました。
もどったのち、
しばらく部屋にこもりました。
夕飯のころにでてきて
「ほら、おみやげだ」と云って
手作りの万華鏡をわたくしにくれたのです。
のぞき窓から見えたのは、
まさに淡紫の迷宮でした。
なかに、
何を仕込んだのかはおしえてくれません。
「秘密」
ずっと後に、万華鏡の本体がこわれてしまい
わたくしは正体を知ることができました。
それは、ルリシジミの翅だったのです。
〈銀河通信社〉速記取材班記者 松本ちか
※鉱物の画像は、ただいま鉱石倶楽部にて標本を出品している螢石です(長野)