桜の季節に
ちょうどよく〈左近の桜〉シリーズ4
「その花の名を知らず」も最終回となりました。
掲載誌の『野性時代』も紙の雑誌を終了し
次号からは、電子書籍となるそうです。
この流れは加速するのでしょうね。
紙の本は趣味やアートの世界のモノとなりそうです。
だからこそ、
一点モノを所有したい人もあらわれるのでしょう。
百年以上も個人蔵であった
ゴッホの絵がオークションに登場し
予想の倍の高値で落札されました。
《モンマルトルの通りの光景》1887年春
丘のうえの風車と、田舎道が描かれています
ゴッホの時代(19世紀末)はこのあたりはまだ
農村だったのです。
ご存じのとおり、ゴッホは弟テオにあてて
進行中の作品の構図や素描をそえた長い手紙を
書くことを日常としておりました。
しかしながら、
パリ時代はテオと同居していたため
実家へ帰省したテオを追いかけてだした
三通ほどの手紙しかありません。
(テオ以外の身内と折りあいの悪いゴッホは帰省せず)
オークションに登場したこの風景画についても
ゴッホの心境変化をさぐる手がかりは不足しています。
パリへ出てくるまえのゴッホは
まだ印象派の作品を目にすることもなく
色彩に目ざめていませんでした。
黒を主とする明暗の美しさに
夢中だったのです。
パリでの住まいは、農村と隣接する
郊外の町であったモンマルトルの一画でした
(弟テオとの同居です←生活費はむろんテオの負担)
ゴッホの故郷オランダは低湿地の黒ずんだ景色、
パリは周囲に草原がひろがる盆地です。
画材も豊富。浮世絵にも出逢いました。
色彩に目ざめる要素がそろったのでしょう。
スイッチがはいれば、爆発するのがゴッホです。
〈ひまわり〉や〈黄色い家〉のゴッホと
〈じゃがいもを食べるひとたち〉のあいだにあるのが
このたびの競売作品というわけです。
きょうは耳猫風信社の雑貨舗の
カートオープンです。
イースターにちなんだ卵や
春に浮きたつ小鳥たちの切手などを
あつめました。
なお
《航海案内書》の新作も準備中です。
4月のご案内となります。
森のなかの
城ではなく、函のおはなし。
函には書物がはいっています
その森のなかを歩く場面を書こうとしたさい
なぜか廃屋が目に浮かびました。
おそらく『群像』で連載している
「ゴッホの犬と耳とひまわり」の原稿で
廃市と呼ばれる土地について
書いていたからだと思います。
その残像が
〈航海案内書〉のテキストにも
写りこんだのです。
この春もすみれを探しに出かけました。
去年、群れて咲いていたところへ
行ってみましたが、
今年はまだ一輪も咲いていませんでした。
ほかの場所で、一株だけ見つけました
これが今年の初すみれです(地味)