左近の桜シリーズの新刊
『その花の名を知らず』が発売になりました。
「森の話」をする男とおなじバスに乗りあわせた桜蔵。
そこから、物語は進んでゆきます。
バスのなかで、桜蔵が耳にする着信音も伏線となっています。
《もう森へなんか行かない》の邦題で知られるこの曲は
Ma jenuesse fout l’camp (わたしの青春は去ってゆく)
が原題のフレンチ・ポップスです。
1962年にGuy Bontempelliが曲をつくり
さまざまな歌手に提供されましたが
1967年にフランソワーズ・アルディが謡い、
そのさいに日本でも流行しました。
Nous n’irons plus au bois
(もうわたしは森へ行かない)
の歌詞は古い童謡にもとづくそうです。
これを邦訳するさいに
もう森へなんか行かない
とした人の語感の鋭さは見事です。
『その花の名を知らず』の連載当初、
このMa jenuesse fout l’ campの
詩の一部を、日本語にして章タイトルとしていました。
連載後半は詩を離れています。
単行本では数字のみの章タイトルです。
フランソワーズ・アルディは
わたしより、少し年長の人たちのあいだで
その時代のアイコンとして機能し
フランス語圏だけでなく英語圏でも日本でも
アイドルでした。
モードも注目のまとでした。
ブロンドのロングヘアながらも
〈少年っぽさ〉が魅力
(と思います。当時のフィルムをながめての感想です)
パリ生まれのひとらしく
さまざまな服を着こなしていますが
紺色のトレンチコートにデニムといった、
リセアン風の
つまり少年の服が、とくにお似合いです。
フランスの一般のひとが
ふだんでも暗色の服を着ていいんだ、と
気づいたのは
川久保玲さんがモード界にあらわれてから、
という伝説がありますが、
フランソワーズ・アルディは
まさに〈少年のよう〉な服を着こなしていたひとです。
『その花の名を知らず』の話にもどります。
《もう森へなんか行かない》のメロディが
くりかえし聞こえてくる。
それが、今回の物語の特徴です。
なぜか、の答えは
実は単純なことで、
ミステリーでもなんでもありません。
桜蔵のルーツが謎解きの本流です。
このたびは相関図の空白を埋める作業をしてみました。
ですので、登場人物が多くなり、
みなさまには少し読みにくいかもしれません。
連載時より、だいぶ整理はしたのですが、
それでも、ややこしいところがあります。
現世の境界を超えてしまう人物もいるので、
なおさらです。
相関図をイメージするのに
少々、ご面倒をかけるかもしれませんが
そういうときは読み流して
漂流をお愉しみいただければ、さいわいです。