『ゴッホの犬と耳とひまわり』文庫版の刊行にあわせて
「もっとゴッホくんnote」も更新して、「3」をつくりました。
(耳猫風信社の最新通販にてご案内しています)
今回も、単行本の刊行のさいに削った連載時のエピソードを
紹介しています。
連載のときには、いくつもの沼が存在しました。
インク沼、ザクロ沼、金箔沼、茶箱沼、蚕沼、楕円沼
秋の虫沼などなど。
Note3では、そのうちのインク沼と秋の虫沼をあつかっています。
ただし、沼のかいぼりをするのは避けました。
あらたな沼にハマるおそれがあるので。
たとえばですが、秋の虫のところで
キリギリスとはなにか問題にはふれないことにしました。
あらためて調査したところ、
古代と現代の呼称のちがいだけでなく、地方名なども
かなり複雑なうえに、
現代でさえ、キリギリスにはかなりの地域差があり、
名称だけでも沼化しているのです。
ここは「近寄らないほうがよさそう」と思いました。
ちなみに、キリギリスは秋の虫ではありません。
唱歌の「虫のこえ(蟲のこゑ)」は
〈秋の夜長の~〉ではじまる唄ですが、
明治時代、これの二番は〈きりきりきりきり きりぎりす〉でした。
のちになってこの歌詞のきりぎりすは
古語で、コオロギを指すのだということになり、
〈きりきりきりきり こおろぎや〉と
昭和のはじめに改訂されました。
でも、コオロギって「きりきりきり」とは鳴かないですよね。
(昔のひとには、そう聞こえたのだろう、ということになっている)
そもそもですが、
古語の蟋蟀(万葉歌では「きりぎりす」と読んでいた)を
「こおろぎ」と読むようにあらためたのは
江戸時代の国学者、賀茂真淵(かものまぶち)なのですが、
ここがまた沼なのです。
わたしは、昆虫も国文学も専門的に学んでいないので、
いずれの沼にも「近寄らないにかぎる」と思っています。
でも、どなたかが素人にもわかるように
解説してくださるのなら、拝聴したいです。
というわけで、「もっとゴッホくんnote3」では
さらなる沼にハマらないていどに
単行本時に削った部分を再構成しました。
文庫版『ゴッホの犬と耳とひまわり』の刊行にあわせて
講談社さんの文芸サイトtreeでも
「もっとゴッホくんnote1」が読めるようになっています。
今月、国書刊行会さんより
刊行されるアンソロジー本《12か月の本》の
短篇「月の船で行く」(初期形)が収録されます。
編者は、西崎憲さんです。
目次にならぶ、長野以外の著者のかたがたはたいへん豪華です。
「ほかでは読めない、でも読みたかった」佳品ばかりです。
みなさまも、ぜひご一読を。