豆乳と珈琲とはちみつと寒天でつくったゼリー。甘さはひかえめ。上にのせてあるのは、ばらの砂糖漬け(ゼリーの表面が泡だってしまったのを、かくしている)。そこからじんわりと、甘みがしみてくる。
ばらの砂糖漬けは、いただきもの。ばらの花びらをそのまま砂糖漬けにしたと、説明されている。フランス製。口にしたとたん、ばらの香りがひろがる。そのまま、おやつとして食べてもおいしい。庶民的な豆乳ゼリーとの組みあわせに疑いを持ちつつ、ちょうど手もとにあったので飾ってみたしだい。
ばらと云えば、先に書いた「傘をどうぞ」のなかで、ばらの品種であるクリムソン・グローリーを登場させたが、わたしがこの名まえでまっさきに連想するのは、むろん『ポーの一族』(萩尾望都著)。品種名を知ったのも、おなじく。シリーズのなかの「小鳥の巣」という作品だった。ドイツの寄宿学校へあらわれたエドガーとアラン。温室の番人、マチアスにその名を教えてもらうのが、クリムソン・グローリー。
ドイツの作出家によって品種改良されたこのばらが、エドガーとアランがまぎれこんだドイツの寄宿学校で育てられていたのも当然。萩尾さんが、いかに細かく、注意深く、アイテムや時代を設定していたかの、これはほんの一例だ。
子どもの読者として読んでいた小・中学生のころには、そこまで知り得なかったけれども、今は、ことあるごとに萩尾さんの創作の精密さを実感する。