この、こっくりした味わい。
ロシアケーキならではの、ボリュームに目をうばわれる。
ビスケットのうえに、アーモンドやピーナッツ風味のマコロンをしぼりつけて焼いてあるのだそうだ。それにまるごとのプラムに、エメラルドを思わせるアンジェリカ。
子どものころに、大きさにまどわされて買ったブローチのようなフォルムに、なつかしさと、よろこびをおぼえる。
色やかたちにたいして、まだ素朴な感覚である子どもの好みは、おとなとはちょっとちがう。近ごろの、洗練されたおしゃれなお菓子は、おとなの目を楽しませることにかたよりすぎている。
お菓子は、やはり子どもをうれしがらせるのが本筋だ。
この館山中村屋のロシアケーキは、物語にせよお菓子にせよ、子どものよろこびが忘れられがちな、今だからこその逸品。
といいつつ、おとなのわたしが、この到来ものをうれしがっているのであるが。